アドルフの画集

 お正月以来、しばらく冬眠しておりました。去年の冬にも、ヤマネのように冬眠したいと書いたような気がするのだけど、ここのところ食べると眠くなる、素直に眠る…状態でした。そろそろ起きたらという声も、どこやらから聞こえます。

 昨夜は「アドルフの画集」を見ました。ヒトラーが絵の道を志していたことは知られていますが、画家になることを模索するヒトラーユダヤ人画商との交点を描いた力作。この作品はフィクションであり、歴史に「もし」はないのだが、大戦後復員兵として屈折した日々をおくるヒトラーが、違う方向にその才能を開花させていたらという設定に引き込まれてしまいました。原題はMax で、大戦で右手を失い、画家としての将来が閉ざされた、ジョン・キューザック演じる画商の名、彼もまた傷を負っています。大戦後の荒廃したドイツに、ぽつぽつと噴出する反ユダヤ主義の声が、ヒトラーらのアジテーターによって次第に大きなうねりとなっていく様子の描写には寒気さえ覚えましたが、今も起こりうることかもしれません。お正月に読んだ「デモクラシーの冒険」の冒頭の引用を思い出したので、一部引用

『ナチ党が共産党を攻撃したとき、私は自分が多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。ついでナチ党は、・・・・・・学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だから行動したーしかし、それは遅すぎた。』(マルティン・ニーメラー、『彼らは自由だと思っていた』ミルトン・マイヤーより)

 字幕翻訳って字数制限が厳しく、うまいなあと感心することが多いのだけど、ユダヤ人社会が底流にあるこの作品で、父親がマックスに「教会に行こう」と誘う部分はどうだろうか。シナゴーグが無理なら、せめて会堂とかどうでしょうね。

アドルフの画集 [DVD]

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