戦争はごめんだ その2 『夕凪の街 桜の国』

 話題にのぼって久しい「夕凪の街 桜の国」、へそ曲がりが災いして今まで手にしなかったことが悔やまれる作品、涙グジュグジュで読み終えました。原爆の悲惨さを声高に主張しはしない、目の前に突きつけたりもしない。ヒロシマ被爆した家族、そしてその後の物語が紡ぐように語られていきますが、静けさと不思議な明るさに満ちています。「生きとってくれてありがとうな」、ようやく伝えあうことができた思いも、束の間のほほえみも…、あたりまえの生活が奪われていきます。
 35ページ目は空白です。ここで読者の心に沸いたものがこの物語を完結させるのだと、これから読者が重ねてゆく豊かな人生がその結末を激しいものにしてゆくのだと、作者はあとがきで述べています。今もヒロシマは終わっていないのです。おおげさではなく、ぜひ世界中の人にこの作品を読んでほしいと思います。「原爆を落とした人はわたしを見て『やった!またひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?」、皆実の言葉を深く受け止めてほしいのです。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)