衝動買い

タッチハンガー がんばり続けてなお、満たされないあなたへ

タッチハンガー がんばり続けてなお、満たされないあなたへ

タッチハンガー?何だか変な語感だが表紙上部に小さくこう記されている:The Hunger for Touch‐a search for intimacy,acceptance and reassurance 、なるほど。女性に本来備わっていたはずの身体の特性が失われ、忘れられている現代日本の女性の暮し、出産、子育て、学び、からだ、セクシュアリティ、老いなどについて、タッチハンガー(ふれたいふれられたい欲求)がちゃんと満たされていますかという問いかけを根っこに論じたエッセイ集だ。雑誌連載をまとめたもので、それぞれ3ページから4ページくらいの分量でどの章からでも読める構成。

私自身、娘たちの母であり、老いた母にとっては今でも(当たり前だが)娘でもある。読みながら娘たちや母との関係の折々を振り返っている。ずしりと重くしんどい部分も当然でてくるし、迂闊な母親だったが許されているだろうかと反省させられたり、そうそうとあれこれうなづいてみたり…、実に刺激的。読後、気持ちが少々軽くなったような気分。副題に「がんばり続けてなお、満たされないあなたへ」とあるけれど、がんばっているわけでもないし、満たされているしと思っている人にも読んでもらいたいな。オススメ!

著者の三砂さんの専門は母子保健、疫学。十年余り暮らしたブラジルは社会経済的には問題を抱えた国だったが、人と人との関係は成熟し生命力にあふれていたと振り返っている。なぜブラジル・サッカーが強いのか、これもタッチハンガーから分析されるんですね。前作の『オニババ化する女たち』は話題になっていたが未読、他の作品も読んでみたい。